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最高裁判所第一小法廷 昭和42年(行ツ)43号 判決 1967年9月28日

上告人

渡辺カツヱ

右代理人

下光軍二

外三名

被上告人

秋田県選挙管理委員会

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人下光軍二、同上田幸夫、同小坂嘉幸、同上山裕明の上告理由第一点について。

昭和四一年法律第七七号による改正前の公職選挙法所定の補充選挙人名簿は、物定の選挙に際して調製されるが、その調製は、右選挙だけを目的とするものではなく、右選挙を機会として基本選挙人名簿を補充する趣旨でなされるものであり、したがつて、その手続は、右選挙の管理執行の手続とは別個のものに属する。そして、選挙人名簿は、基本名簿たると補充名簿たるとを問わず、それに脱漏、誤載が存したとしても、法定の手続を経て確定したときは、有名な名簿たるを失わず、またその脱漏、誤載については、法が特に設けた名簿修正争訟の手続によつてのみ争うことが許されるものと解すべきである。

ところで、本件における上告人の主張は、要するに、補充名簿の調製機関が二名の登録資格者に対し名簿登録を申し出でる機会を故意に失わしめたというのであり、その不登録について、論旨は、これを公職選挙法旧二三条にいう「脱漏」の場合にあたらないとし、名簿修正争訟によるべきではないと論ずる。しかし、右二三条がもともと職権登録をたてまえとする基本名簿についての異議申出の規定であることにかんがみれば、同法旧二九条により右の規定を申出による登録をたてまえとする補充名簿についての異議申出に準用するにあたつては、単に登録申出のあつたものが登録されなかつた場合に限らず、上告人主張のような妨害により登録がなされなかつた場合も、またここにいう「脱漏」にあたるものと解するのが相当である。してみれば、上告人の主張をもつて名簿修正争訟上の問題であるにとどまり、それが補充名簿の無効原因、さらには本件選挙の無効原因となることのない旨を判示した原判決の正当なことは明らがである。論旨は、独自の見解に立つて原判決を非難するものにすぎず、到底採用することはできない。

同第二点について。

原判決は、上告人主張の登録妨害は、補充選挙人名簿に関する争訟上の問題であるにとどまり、選挙の効力に影響がないものと判断しているのみならず、上告人主張の右事実はこれを認めるに足りる証拠がないとして、上告人の主張を排斥しているのである。したがつて、原判決としては、上告人の主張事実が公職選挙法六条に違反するがどうかについてまで判断する必要がなかつたことは明らがであつて、原判決に所論の違法は認められない。それゆえ、論旨は理由がない。

同第三点について。

原判決は、上告理由第二点について説示したとおり、上告人の主張するような登録妨害の事実を認めるに足りる証拠がない旨を認定しており、この認定は挙示の証拠に照らして肯認することができる。したがつて、所論違憲の主張はその前提を欠き、論旨は理由がない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条にしたがい、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(大隅健一郎 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田 誠)

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